研究概要 |
英語の動詞類(述語類)の有形照応表現(do so, do it, do that)と無形照応表現(VP削除,Gapping(空所化))に焦点をあて、どのような条件・制約のもとで起こるかを主に文法面で考察した結果は、大体、次の通りである。 (1)無形照応表現では、(1)一つの構成素が削除される。その場合、(五つの階層からなる)VPの削除は統語単位だが、空所化では機能単位が関係する。(2)削除される構成素は旧情報だが、VP削除では時制のない構成素が、空所化では時制のある構成素が削除される。(3)残される構成素は、空所化では、すべて新情報だが、VP削除では必ずしもそうではない。その際、VP削除では、時制がある構成素(doなど)か、時制のない構成素(to)かが残るが、空所化では時間に関係しないものが残る。(4)VP削除はand, butなどが用いられる等位節にもwho, becauseなどが用いられる従属節にも現われるが空所化はand, orの等位詞だけが用いられる等位節にしか現われない。 (2)有形照応表現では、(1)統語単位の動詞句が関係する。(2)旧情報を表し、新情報に焦点をあて対照させる機能をもつが、対照要素が義務的に後続する場合は起こらない。(3)動詞による制限があり、do soとdo it/do thatに違いが見られる。(4)文脈による制限もある。do soは完全に統語論的文脈によって起こるのに対し、do it. /do thatは語用論的文脈に支配され、基底生成とも考えられる。 以上、相違、補完性などが明らかになってきたが、一つの大きな枠組みは模索中である。 日本語では動詞と強く統語的に結びついているので、英語ほど動詞句削除は起こらない。また、発話の違いも大きく影響してくるように思う。 なお、こうした研究成果の一部は「英語音声学」-日本語との比較による-(1996年4月)に現われた。
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