研究概要 |
主に動詞類の無形照応表現の日英語比較分析の結果、明らかになった文法面での普遍性と個別性を述べる。 (1)無形照応表現は、Sagのいう削除やHalliday-Hasanのいう一種の代用ではなく、発音しない現象と考えられる。従って、名詞類の無形照応形であるPROに似ているようにみえるが、実際はそうではなく、例えば、'John came early and [e] left late.'の無形照応形と等しい。 (2)日本語における動詞類の照応表現の特徴は、大体、次の通りである。英語面はすでに前回、述べた。 (1)時制のないVP照応の起こる「(花子)です」のような助動詞は、VP,V'照応形として、時制がある主動詞の繰り返しは、(S照応形)、VP,V',V照応形としての機能をもつ。その際、V照応が起こるのは、and/orの等位節に限られる。時制がある主動詞の繰り返しは、'同一条件'の下で、ほとんどすべてをカバーできるのは、動詞が日本語の文構造の中心であるからである。動詞の繰り返しは、照応形としての役割をしている。(2)新情報は(音声で)表現されねばならないが、旧情報は時制がある主動詞を除いては表現されなくてもよい。動詞の繰り返しは、新旧の情報に関係するのではなく認知的同定に関係している。 (3)英語でのVPの無形照応形に対し、日本語では時制がある主動詞を繰り返す場合が多いことは、繰り返しと省略との間に共通の原則があると考える。それは、両言語の語順と文末焦点とが深くかかわっている. (4)日本語の類似性は、最大に省略された最も経済的なVP表現にみられる。特に、主語に焦点があてられるdoや「...です」のような時制のある助動詞が残る場合である。しかし、補文にVP省略が起こる最小にVPを表現する場合には、日英語では異なる。各々の構造規則に従うことになる。 (5)日英語ともVPの無形照応表現は、「2つ以上の文境界を越えてはならない」。 (1),(3),(4),(5)は普遍性とかかわる。その他の普遍性及び認知論的な面は別の報告書で述べる。
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