研究概要 |
本研究ではまずコミュニケーション論,及びテスト論などに関する文献研究を行い,理論背景をさぐった。次にTOEFL Research Report等の実証的先行研究の資料により現在までの分析方法に関する情報を入手した。以上のことを踏まえて,MTMM(多特性・多方法)分析のためのマトリックスを次にように作成しパイロットテストを実施した。多特性については9つの特性(文法・発音・流ちょうさ・理解・一貫性・内容・語り・対話能力・社会言語能力)を考え,また多方法に関しては3つの方法(ライティングテスト・インタヴューテスト・テープスピーキングテスト)を作成した。テストは大学生30名に実施し,それぞれのテストを最低2人以上の英語母国語話者(教員)に評価してもらった。テストの評価後これら9つの特性と3つの方法を相関係数,因子分析により分析検討した結果次のことが判明した。3つのテスト方法は言語能力の3つの能力つまりライティング能力,インタヴュー能力,テープスピーキング能力と限りなく類似している。また各方法に備わった各特性は3つの言語能力にそれぞれ固有のものである色彩が強い。言いかえれば,3つのそれぞれの能力は他の2つの能力と区別されうる独自の要因・要素を含んでいるため,例えば作文における文法の力はインタヴューの際の文法の力を必ずしも正確に示してくれないといえるのではないかということである。本研究はパイロットテストの段階であるため一般化するにはまだ少々困難な面も残しているが,スピーキングテスト開発に不可欠な構成概念の用案に方向性が見出せたという点において,本テストに向けて一応の結果が得られたと言える。
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