研究概要 |
〈研究の目的〉 本研究は英語教育におけるコミュニケーション能力の育成と指導というものを測定と評価という観点から捉え,英語4技能の中で最も開発が遅れているスピーキングテスト開発に取り組んだものである。研究では,主に次の4つの点を多特性・多方法(MTMM)法により明らかにすることを目的とした.1)9つの特性(語い,文法,発音,デイスコースなど)がスピーキング能力と構成する妥当かつ弁別的な要素であるかどうか。2)テスト方法と言語能力との結びつきはあるのか。3)9つの特性は言語能力の基準的要素といえるかどうか。4)9つの特性はテスト方法とどのように関連しているのか。 〈研究結果〉 研究結果は主に次の3点に集約できよう。1)因子分析,クラスター分析の結果,スピーキング能力においては直接コミュニケーション能力(インタビューによる測定能力)と半直接コミュニケーション能力(テープなどの録音で測る能力)は異なる能力であることがわかった。特に中位レベルから下位レベルの学生に上の現象が見られるようである。2)9つの特性は直接コミュニケーション能力と半直接コミュニケーション能力においてそれぞれ異った働きがもつと考えられる。9つの特性の名称が文法,語い,発音のように双方の能力テストにおいて同じものがあるため運用上の混乱が生じていると思われる。本質的には,例えば直接コミュニケーション能力の文法力と,半直接コミュニケーション能力の文法力とでは異なった特性をもっており,このことは9つの特性すべてにわたって同様のことがいえる。これまで作文の文法力,リスニングの文法力,スピーキングの文法力などを同一視しがちな傾向にあったが今回の結果は教育者に新しい情報を提供したものと考えられる。3)直接コミュニケーション能力と半直接コミュニケーション能力はいずれも他のものの代用により測定されることのできないコミュニケーション能力全体の重要な部分を構成していることが明らかになった。従って多肢選択テストや筆記テストのみならず,スピーキングテストにおいても直接テスト.半直接テストなどできる限り多方面からの測定を行い,厚生の能力の公平かつ正確な評価をすることが望まれる。 今後の課題としてコンピュータを利用したComputerized Adaptive Speaking Testのような簡易で正確なテストの開発も時代の要求となろう。 本研究の成果はTESOL'96(シカゴ・アメリカ,1996年3月),AILA'96(イヴアスキラ・フィンランド,1996年8月)の両学会で口頭発表を行い,Educational studies(ICU教育研究所発行)のVol.39CPP.144-167)に掲載されている。
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