比較構文についてフランス語などの文献を中心に考察した。 1)フランス語の比較構文についてタンポロジー的観点、および英語との対比により対照研究を行い、フランス語比較構文の普遍性と特殊性について研究した。扱った問題は、比較級形成辞、形容詞の性質、比較級導入辞、比較と否定などである。普遍的観点により、特に「量的比較」と「二者択一が」密接に関連する概念であることが明らかになった。 2)二つの形容詞を比較するいわゆる「メタ言語的比較構文」について、インド=ヨーロッパ語的特徴、形容詞の性質、談話の観点より分析し、その多義性、および通常の量的比較との違いを明らかにした。フランス語では「メタ言語的比較」であっても単なる「二者択一」比較ではなく、量的比較の特徴を強く示すことが明らかになった。これは新たな知見である。 3)いわゆる「二重比較構文」の特にその構文的特徴について中世フランス語よりの通時的変遷、および英語との比較研究を行った。文中から比較級形成辞が抽出される形でこの構文が成立してきた過程が明らかになった。 4)比較級起源の熟語plus ou moins、およびその否定ni nplusni moinsについて、文学用例を多数収集し、その多義性を分析し、これは元々の比較級の多義性に由来することを明らかにした。ここにおいても、やはり「量的比較」と「二者択一」の働きが相俟って機能していることが明らかになった。 以上の成果を、いくつかの論考に発表し、上智大学、パレルモ大学、筑波大学、岩手大学などの学会や研究会で発表した。また研究報告書を準備中である。
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