フランス第三共和国における〈近代的言語態〉の発明と〈国民国家〉との関係に関する本研究は、方法論的な基礎研究のための文献、および資料分析に必要なハードウエア環境を整える段階を終え、平成7年度後期からは理論的な検討作業に入り、10月の「社会学の方法に関する日仏シンポジウム」での討議、11月に研究代表者自身が企画・組織した「日仏メディア学シンポジウム'95」(東大言語情報科学専攻主催)における総合司会と発表「中断されたコギトから器械状連結へ」、11月から平成8月1月にかけて言語情報科学専攻でメショニックパリ第8大学教授と共同で行ったセミナー「現代性の詩学」などを通して、言語態分析にもとづくメディア研究・近代性批判の理論の探究という理論面での大きな成果を挙げることが出来た。この成果は、研究代表者が平成8年3月から4月上旬にかけてパリ第8大学フランス文学科博士課程においておこなう集中講義「文学的近代の理論的フロンティア」においてフランス第三共和国のみならず日本近代国家と言語態の発明の問題として国際的な問題提起へと発展する予定である。さらにまた、本研究の成果の一部は、フランス語の世界的文学理論誌およびメディア理論誌に公表されることがすでに決定し、「国民」、「国民国家」と「メディア」および「文学」の諸言語態との真に国際的な共同研究の可能性を提起するという役割をも果たしつつある。本年度以降資料分析の深化と国際研究の拡大をめざすこことになる。
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