平成7年度の研究計画には以下の課題をかかげた。 (1)リゾートという現象が成立する与件としてのパリ都市論研究。 (2)鉄道をはじめとする交通史、観光の歴史研究。 (3)第二帝政に開発されたリゾート地ノルマンディー地方の研究。 (4)身体保養の実践として「温泉」開発とその利用の文化史研究。 5回にわたる論文執筆により、(1)(3)(4)についてはほぼ予定通りの研究成果をおさめたが、リゾートという文化現象には「衛生学」が深く関与していることが明らかになり、またこれに関連して電気エネルギーの文化史的意味についても認識を深めた。 (2)の観光旅行については、「オリエンタリズム」の問題が関与していることが明らかになり、さらには広義の「帝国主義」の問題とも関連することが明らかになってきた。この二点の研究をすすめることにより、フランス・リゾートの研究を大きくヨーロッパの歴史研究のなかに位置づけることができると思う。8年度の研究課題の留意点としたい。
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