平成8年度は、以下の項目に関して研究を行い、それぞれの成果を得た。 1.これまであまり日本では顧みられず、そのためあまり資料の多くない18世紀の「敬虔主義」末期や19世紀の「覚醒運動」などの宗教史的文献を、平成7年度にまとめて購入しその研究にはいたったが、それらの文献を読み解いた成果を、その啓蒙に与えた積極的また消極的影響を文学史の観点から見直し、「批判の両犠牲」の視点から跡づける作業を行なった。 2.その過程で、抽出されてきた啓蒙批判のための主要な概念・形象・イメージを聖書や神話の多用のイメージの連関・連想のなかで位置づけ、その関連をさぐった。そのために、CD-ROMと、そのパーソナルコンピュータ用読み取り機を用いて、これまでコンコルダンスではできなかった複数の項目の錯綜する関わりをも追求した。 3.また、その成果を、問題のより広い学問的地平の中において検討した。そのために、18・19世紀の神学、哲学、宗教学、神話学の主要な文献を購入し、その記述にあたって、学問の境界を横断する広い地平のなかで、啓蒙の持つ積極性と問題性とを明らかにした。 4.以上の調査・研究をふまえて、ドイツ文学ことにその批評の伝統の中で、啓蒙と宗教の関わりをその相互批判の過程として、その関わりの積極的な意義を検証した。批評文学全般にわたる文献との関連付け、またその伝統の中で、啓蒙と宗教の関わりという問題の意義を最終的に結論づけようとした。
|