本研究は明治期をはじめとする古い翻訳書・辞書・学習書の収集と、そのデータベース化という二つの目標を持つものであるが、3年の研究期間の初年度に当たる平成7年度においては、明治期の書籍のデータベース化を中心に研究を進めた。 1)データベースの作成について 平成7年度は、国会図書館をはじめとして、明治期の貴重文献を所蔵している研究機関の蔵書目録を積極的に集め、データベースの作成に着手した。国会図書館・大阪大学図書館・関西学院大学図書館の蔵書については、データベース化をほぼ完了した。また大阪大学鈴木文庫と関西学院大学玉林文庫については、貴重文献を実際に手にし、書誌的にきわめて厳密なデータを作成するように努力した。その結果、従来の書誌に様々な間違いがあることが判明した。とりわけ、信頼性の高いとされた国会図書館の目録にも、種種の不正確な点のあることが明らかになった。 2)個別の文献の解釈 本年度においては、収集した文献に基づき、おもにシラ-の明治初期の受容について研究を進めた。その結果、明治10年代において圧倒的に多く『ヴィルヘルム・テル』が翻訳・翻案されたこと、その背景に当時の自由民権運動の政治思潮があったらしいことが判明した。この研究成果の一部は平成7年日本独文学会春季研究発表会シンポジウムにおいて口頭発表し、また今後原稿化の予定である。
|