本研究は明治期をはじめとする古い翻訳書・辞書・学習書の収集と、そのデータベース化という二つの目標を持つものであるが、3年の研究期間の2年度目に当たる平成8年度においては、大正期の書籍のデータベース化をはかるとともに、ドイツ学を推進する明治政府の文教政策を中心に研究を進めた。 1)データベースの作成について 平成8年度は、国会図書館・東京都立中央図書館をはじめとして、大正期の貴重文献を所蔵している研究機関の蔵書目録を積極的に集め、データベースの作成を行った。国会図書館・大阪大学図書館・関西学院大学図書館の蔵書については、前年度(平成7年度)に作成したデータベースを再度チェックし、データとしての信頼性の向上を目指した。また大阪大学鈴木文庫と関西学院大学玉林文庫所蔵の大正期文献に関しては、貴重文献を実際に手にし、奥付などの確認を行い、書誌的にきわめて厳密なデータを作成するように努力した。 2)明治期の文教政策について 平成8年度においては、収集した文献に基づき、おもに井上毅を中心とする明治期の文教政策の中におけるドイツ学の位置について研究を進めた。その結果、自由民権運動の盛んになる明治10年代以降、政府の側にイギリス学・フランス学を自由民権運動の引き金になるものとして敵視し、英学・仏学に代わりドイツ学を推進する運動が、井上毅をはじめとする文部官僚のあいだに起こったことが確認された。
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