研究概要 |
ライプツィヒ大学に留学した初期の邦人ゲルマニストのうち山口小太郎と藤代禎輔についての研究がもっとも進み,ドイツ語修業時代と留学時代を中心とした生涯を執筆中であるが,本年度は京都大学教授時代の藤代の講義題目や伝記資料を現地へ出張して蒐集した。尺秀三郎については訳書「政治小説・出生の間道」(シラ-)の訳文の検討やライプツィヒ大学提出のドクトル論文に目を通したほか,上京して彼のドイツ語教授法に関する文献を調査し,また青山霊園にある墓を調査した。北里闌については,留学中に発表した独文劇「フミオ」「佐倉宗吾」を読み,独文を検討し,ドイツでの書評を調べた。また非常勤先の大学の講義で北里を取り上げた。上田整次については「上田先生の思出」を古書店を通じて入手したので,伝記資料もかなり充実した。 彼等の周辺のゲルマニストにも目を向け,本年度はシラ-の「群盗」の初訳者・堀田正次と「独逸国民文学史」の著者・葉山万次郎に関する論文を雑誌発表したほか,山口と藤代の友人である巌谷小波(秀雄)が講師を勤めたベルリン東洋語学校に関する研究も発表した。さらに研究の過程で,明治20年代に留学,ライプツィヒその他に滞在し,ドイツ演劇書を大量に蒐集した毛利高範(佐伯藩主)という特異な人物に出会い,その資料の調査にも従事している。
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