1.「ドイツ近代抒情詩における動植物のインデックス」の作成作業は順調に進んだ。予定していたオスカー・レルケ、ヴィルヘルム・レ-マン、ペーター・フ-ヘル、ヨハネス・ポプロフスキーのほか、パウル・ツェラン、インゲボルグ・バッハマン、ギュンター・アイヒにも調査の手を伸ばして、作業をほぼ完了した。すなわち平成7年度は二十世紀の詩人たちに絞ったうえで、調査の範囲を広げたことになる。当初予定していたドロステ=ヒュルスホフは、他の十九世紀の詩人たちと共に8年度の調査対象にすることとした。 2.作成されているインデックスのデータにもとづくレルケとポプロフスキー、さらにその他の詩人たちとの比較研究が進行中であるが、すでに興味ぶかい事実が明らかになっている。詩集の一定ページ数内における動植物の出てくる頻度数は各詩人によって実にまちまちであるが、いわゆる自然詩人といわれている人たちの作品における頻度数はやはりめだって高く、自ら自然派であることを否定しているポプロフフスキーもデータの上では自然詩人であることが歴然としている。フ-ヘル、レルケ、ポプロフスキーはいずれも北東ヨーロッパの出身であるが、生まれ育った地域が少しずつ違っていることが動植物の選択の違いとなって現われている。 3.ボプロフスキー研究もテクスト分析や文献調査の面で着実に進展した。また特記したいのは、ポプロフスキーの川の形象についてドイツ語による論文を完成させたことである。川は詩人にとって動植物の活動する格好の場であり、この論文でも当然動植物のことに言及している。掲載される論文集(全巻ドイツ語)の刊行が遅れているが、この論文が自然詩研究の面での国際交流の足掛かりとなることを期待している。
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