本年度は、ジャイナ・ラ-マ-ヤナ中の最古の作品たるヴィマラス-リのパウスマチャリヤの中で用ひられたマ-ハーラーシュトリ-語の特色についてさらに調査と考察を進め、この作品が印度語構文論史料としてもきはめて重要な作品であることを確認した。 内容構成および形成史について言へば、このパウマチャリヤは、サンスクリット語のヴァールミ-キ・ラ-マ-ヤナよりはるかに新しい成立の作品であること、ヴァールミ-キ・ラ-マ-ヤナの筋を活用しているが、作者の主な意圖はラ-マ王の事蹟を語ることよりはむしろそれを枠組としたうへで、ジャイナ教教義を宣揚することであったこと、他の登場人物例へば、ラ-ヴァナやハヌ-マットの扱ひもヴァールミ-キ・ラ-マ-ヤナの場合と著しく異っていること等を確認することができた。
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