本研究の目的は、英語の音声面の学習、とりわけそのリズムの習得に対して、母国語である日本語がいかに干渉して学習上の障害になっているかの実態を把握し、かつ、その障害を克服することに特化した教材を開発することである。本年度(平成9年度)は本研究の最終年度となるため、これまでの研究実績を総合的に記す。 1.日本人インフォーマント(主に本学の1、2年生)の日本語のリズムおよびイントネーション上の特徴と、同一人物が英語を話す際の同様の音調的特色のデータを採取・分析し、年配者や外国人のインフォーマントから得た同等のデータと比較対照することによって、主に次の点が明らかになった。 (1)日本語については、学生の出身地による偏差(方言差)が縮小する一方で、「若者ことば」に特徴的な音調やリズムのパターンが現れつつあることが本研究でも追認された。 (2)リンフォーマントごとの日本語と英語のリズムおよびイントネーション特徴は、英語学習のレベルにより差異はあるものの、全体として相関性が高く、日本語(母国語)における比較的「平板な」音声的特徴が英語の発音に強く影響していることが示唆された。 (3)最近の学生たちが中学や高校で受けた「コミュニケーション重視」の英語教育においてもなお、リズムやイントネーションの習得は不十分であり、日本語と英語との本質的で最も重要な音声的特色の差に配慮した訓練が徹底していない実態が明らかになった。 2.英語学習者が各自の発音上の「くせ」を認識し、英語本来のイントネーションやリズムを重点的・集中的に学習するためのトレーニング教材開発に着手した。ただし、これはまだ試作品の段階にあり、今後改良を重ねなければならない。
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