俗文献に関する研究成果を得るにはさらに一定の時間を要するが、研究代表者の従前の蓄積を活用し得る仏教文献に関しては当該年度に得られた知見を十全に活用していくつかの成果を公けにすることができた。すなわち、以前から注目されていた『法華経』の蒙古語訳を対象として、そこに観察できる外来形式の導入経路を検討し本仏典の成立過程に関して平成2年に公刊した知見を補強し新たな展開を見た。その成果は今夏刊行されるZentralasiatische studien 26に掲載の予定である。また平成5年度の研究成果公開促進費の交付を受け上梓した拙著『蒙古語訳「宅網経」の研究』で触れた同仏典において見出される擬ウイグル的な術語に関して、当該年度の研究成果を活用して新たな角度からの知見を加味した研究はEurasian Studies Yearbook 2に掲載の予定である。さらに研究代表者が当該年度に着目し研究に着手した『牛首山授記経』の蒙古語訳に関しても一定の成果が得られている。昨夏川崎市で開催された第37回国際アルタイ学会で発表されたその成果は、大幅な加筆、修正を経て今秋刊行予定の同学会プロシ-ディングスに掲載される予定である。
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