研究概要 |
前年度に引き続き,先古典式モンゴル文語資料のうち,モンゴル語古訳本『孝経』および14世紀の漢蒙対訳碑文のモンゴル語の研究を行ない,次のような知見を得た。 1.『孝経』のモンゴル語の文法・語法上の特徴 (1)程度格接尾辞-cegeが1回だけ現れ(ebudugcege18a3「膝の高さほどの」),連体修飾語として用いられている。 (2)位格の接尾辞-da/de,-ta/-teは語幹末が単母音および子音-dに終わる語に付き,-a/-eはそれ以外(二重母音,-d以外の子音)で終わる語に付くという使い分けが存在する。 (3)同様に奪格の接尾辞-daca/-dece,-taca/teceは語幹末が単母音および子音-dに終わる語に付き,-aca/eceはそれ以外(二重母音,-d以外の子音)で終わる語に付くという使い分けが存在する(例外3語)。 (4)動詞bol-「成る」の終止形として,古典期の文献ではみられないboluが19回使われている。これは同時代の他の文献でも稀である。 (5)接続副動詞の接尾辞として,古典期の文献の-γ sa γ ar/-gsegerに対応する-γ sabar/-gseberという形が現れる(5回)。 2.KWIC索引の作成 上記の知見は『孝経』のモンゴル語本文を電子化テキストとし,文法的接尾辞の文脈付き索引(KWIC)を作成し,それを分析したことによって得られたものである。全テキストの転写,およびすべての語彙と文法的接尾辞の文脈付き索引は,本研究の「成果報告」として公刊する。
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