国際結婚家庭の言語環境を構成する種々の変数を見出し、それら変数の相互作用と子どものバイリンガル能力の習得との関連をとらえる仮説の構築を目指した研究の第一段階である本研究では、2年の研究機関に、(1)先行研究(1985年、1990年)で用いたアンケート質問項目の再検討と改訂を行い、(2)これを用いて調査を実施し、種々の変数(母語、家族構成、学校や地域の言語環境、バイリンガリズムに対する価値観等)に関するデータを収集、集計し、(3)これらデータのうち家族員間の言語使用形態を、先行研究の結果をもとに暫定的に設定した言語使用形態類型を用いて分類し、同時にこの類型の精緻化を図るため、その妥当性、有効性も検証した。 集計の対象となった家族数は259家族で、関わる国籍は38ヶ国(子どもの大多数は重国籍)、関与する言語は32言語であった。言語使用の形態を類型に従い分類すると、【親同士】、【日本語を母語とする親と子どもの間】、【子ども同士】では、複数の言語を使用する「バイリンガル型」と単一言語を使用する「モノリンガル型」がほぼ半数ずつであった。【親から子ども】では、「バイリンガル型」が圧倒的に多く、【少数言語を母語とする親と子ども間】では「バイリンガル型」の方が「モノリンガル型」より多かった。数的には極めて少ないが、どちらの親の母語も使用せず、第三者言語を共通言語として用いている家庭もあることもわかった。15EA02:全体的に、分析対象となった家庭の多くが、バイリンガルリズムに対して肯定的な姿勢を持ち、社会からも同様な評価を受けていると感じており、子どもをバイリンガルに育てる努力していることが明らかになった。しかし同時に、言語の組み合わせによってはバイリンガルに対する社会の評価が異なるとみている者も少なからずいるなど、バイリンガルが置かれている状況がいかに複雑であるかということも示された。
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