研究課題/領域番号 |
07610529
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
逸身 喜一郎 東京都立大学, 人文学部, 教授 (40107420)
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研究分担者 |
大芝 芳弘 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (70185247)
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キーワード | 叙事文芸様式 / 叙事詩(epos) / 伝統 / ヘレニズム / アラートス / オウィディウス / 教訓詩 / 恋愛エレゲイア詩 |
研究概要 |
本年度も当初の計画通り、ほぼ順調な進展を見た。まず研究の方向性と進捗状況を勘案しつつ、前年度に引き続き必要な資料・文献の調査・選定・収集にあたった。また、前年度に行った研究史の概観と叙事文芸様式を中心とする西洋古典文学史全体の展望によって、ヘレニズム・ローマ期の文芸が本研究上の主たる関心対象の一つとなったが、さらにより具体的な作品研究の過程において、逸身はアラートス作『星辰譜』を、また大芝はオウィディウス作『恋の技法』を、特にその原典研究の題材として取り上げることとした。そして当初の計画に沿って、修辞・韻律・文体といった表現技法と同時に、モティフやテーマ等の内容的側面からこれらの作品原典を検討し、背景となる叙事文芸様式の伝統との関連と独創性の問題を考察した。その成果はともに東京都立大学『人文学報』第276号所載の論文(別記)に結実した。逸身が対象とした上記作品は広義の叙事詩(エポス)の重要な支流となる教訓詩の、ギリシアとラテンの結節点として意義深い作品であり、逸身論文はその内容の正確さを問題としている。また大芝が扱った作品は、叙事文学の傍流をなすエレゲイアのラテン文学における独自の発展形であるローマ恋愛エレゲイア詩の伝統のほぼ最後に位置する作品であるが、大芝論文はこの作品の伝統上の位置づけを探る試みである。これらの研究を通じて叙事文芸様式の伝統の根強さが改めて明瞭になると同時に、その傍流と言うべき教訓詩やエレゲイア詩そのものもまた新たな伝統を形作りつつ変化発展して行った次第が、その過程の一端を通して明らかになったと考えている。この研究成果を足がかりとしてさらに分析・検討を積み重ね、叙事文芸様式の特色と多様性に配慮した研究を継続発展させて行くことが、今後に残された課題である。
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