平成七年度はF.R.Earp.The Style of Aeschylus(1984)の中に表示されているアイスキュロスの比喩のリストに従ってカードを作る作業を進めた。このリストは単に作中の言葉を列挙しただけのものであるので、それらが本当に比喩の表現の実例であるかどうかを筆者がすでに発表した論文において設定した定義にあてはめて作品の解釈と前後関係を考慮しながら検討しなければならない。本年はこれまで発表した作品の中の実例をすべてローマ字化してそれに英訳を付記することにして、現在「ペルシア人」「縛られたプロメ-テウス」「アガメムノーン」のカードをまとめ各作品の中に用いられている比喩の特徴を検討しつつある。 現在の段階ではまだ結論を出して評価をするには至らないが、Earpの挙げる実例が比喩と言えるものか疑問に思われるものや、反対に実例に無いもので比喩と考えられるものを発見した。たとえば単語としての比喩の実例にとどまらず、複合語や単文のなかにもその用例が見いだされることがあり、これらを考慮しつつ比喩の定義を修正していかねばならない。筆者は比喩の研究に基づいてアイスキュロスの文体論と作品研究にまで論を進めようと考えているので、今後は個々の作品の比喩の用例を集める作業と同時に作品論を書く準備も進めている。今年度中には「縛られたプロメ-テウス」の比喩研究について論文を書き上げる予定である。
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