本年度は、近世後期の仙台藩金銀出入取捌仕法に関する史料収集及びその分析に焦点を絞って研究を行った。その結果得られた新たな知見は、下記の通りである。 1.仙台藩は、幕府の寛政・天保両期の相対済令を継受して領内に施行し、武士を中心とする債務者保護を図ったことが判明した。 2.しかし、同藩の債務者保護策はそれに止まらず、幕府相対済令の継受をテコとして、武士が債務者である借金に限っての支払い猶予令を連年といってよいほどに頻発し、幕末に至るまで強力な債務者保護策を実施した。 3.これは、幕府が、天保末年に至り、大坂法を導入することにより、従来の債務者保護から債権者保護へと転換したこととの対比できわめて注目すべき同藩法の特徴である。 4.それはまた同時に、幕府が天保末年の大坂法導入に際して採用した困窮武士救済策が、せいぜい武士が債務者である借金に限り切金制を存続させる程度であったことに比べても、非常に強力な困窮武士救済策というべきものである。 以上のように、同藩近世後期の金銀出入取捌仕法は、これまでの幕府法を中心とした研究が示した金銀出入取捌仕法とは相当様相を異にするものであることが明かとなった。来年度は、同藩法の確立期たる享保・元文期に焦点を当てて研究を進める予定である。
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