本年度は、本研究の中核たる近世中期の仙台藩金銀出入取捌仕法に関する史料収集及びその分析に焦点を絞って研究を行った。その結果得られた新たな知見は、下記の通りである。 (1)仙台藩は、享保4年幕府相対済令及び同14年同令撤回令を継受するなど、幕府の金銀出入取捌仕法に強い関心を払っており、この過程を通して、享保・元文期に自藩の金銀出入取捌仕法を確立した。 (2)それゆえ、形式的には、幕府の切金制や、本公事債権と金公事債権との区別に相当する制度を導入し、幕府法に準じる姿勢がみられるが、それらの諸制度の内容を検討すると、幕府法の内実は完全に換骨奪胎され、驚くべき債務者(その中心は武士層)優遇を特徴とする藩法が形成された。 (3)しかも、かかる独特な仕法の形成は、幕府法についての無知ないし誤解に基くものでなく、それを一定程度理解したうえでの意識的、意図的なものであったことが銘記されるべきである。 2.なお、本年度は、仙台藩法の特徴を鮮明にするため、隣藩たる盛岡藩法との比較検討をも行い、仙台藩の領民支配の強力さと、その金銀出入取捌仕法への表れとを確認した。 3.来年度は、本研究の最終年として、史料収集の不完全な部分を補充しつつ、仙台藩金銀出入取捌仕法の全体像を描き出してまとめとする予定である。
|