1.本年度は、本研究の最終年度であるため、まず残された課題であった明和期以降幕末までの仙台藩金銀出入取捌仕法の動向を検証した。その結果得られた新たな知見は、以下の通りである。 (1)享保・元文期に独特の金銀出入取捌仕法を確立した仙台藩は、宝暦期にそれを債務者有利の方向に修正したが、明和期以降もこの方向を強化し、寛政9年幕府相対済令発布をテコとして、家臣団の債務のみを対象とした支払い猶予令を発し、もって困窮家臣団の救済を図った。この詳細については、「仙台藩金銀出入取捌仕法の崩壊過程」(1)と題して、東北大学『法学』61-3に論文を掲載した。 (2)天保の大飢饉に際して、仙台藩は短期間の支払い猶予令を何度か発したが、飢饉がほぼ終結した段階で、またもや家臣団の債務のみを対象として5カ年間の無利息支払い猶予令を発し、家臣団の救済を狙った。以後、この猶予令を嘉永元年まで延長したのをはじめ、幕末に至るまでさらに数度の支払い猶予令を出し、困窮家臣団救済のための支払い猶予令発布が、同藩の一つの政策基調をなした。この状況の一端については、1998年4月18日開催予定の法制史学会第50回総会(於新潟大学)において、「幕末期仙台藩の金銀出入取捌仕法」と題して口頭報告をする予定であり、また、機会を得次第、『法学』に論文を掲載するつもりである。 2.研究の最終年度として、研究全体にわたり史料の補充調査及び整理を行ない、報告書を作成した。なお、既発表の論文をも含めて研究全体を単行本としてまとめ、いずれ刊行したいと考えている。
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