本年度は、3年間にわたって授与された科学研究費の最後の年であり、その成果を著書『近世服忌令の研究-幕藩制国家の喪と穢-』にまとめることに集中した。 まず史料の補充のため、金沢市立玉川図書館・東大史料編纂所・内閣文庫・国立国会図書館で史料蒐集を行なった。 また、今まで扱っていなかった次のような点について検討を加え、一部は論文として発表した後著書に収録し、他は直接著書に新稿として加えた。 (1)江戸幕府服忌令制定公布(貞享元年)より前にも幕府には服忌制度が存在したことを証明し、その内容を可能な限り明らかにした。 (2)中世までの服忌令の歴史を、素描ではあるが解明した。 (3)江戸幕府における「清め規定」や穢の特質を検討した。 (4)金沢藩の服忌書と服忌制度を明らかにし、幕府のそれとどうかかわるかを明確にした。 このような新しい知見を、従来からの研究に加えて、本年2月末に上述『近世服忌令の研究-幕藩制国家の喪と穢-』を公刊することができた。これは、服忌令を正面からとり上げた書物としては最初のものであり、服忌令に関する最初の包括的・体系的研究であるといってよいかと思われる。それとともに本書は私にとって永年の研究の集大成であり、それが可能になったのは、この3年間科学研究費を与えられたおかげである。心から感謝したい。勿論、解明が不充分であった点や残された課題も少なくない。今後も一層の研究を深めてゆきたい。
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