研究概要 |
ドイツの判例及び学説によると,信用受領者は,信用機関に対し,消費賃借と共に締結された融資契約に基づく抗弁を,特定要件の下で主張できると解釈されてきた。そこでの法的根拠は一様でないが,事実的,経済的な一体性を認める点では,判例と学説は一致している。すなわち,この一体性に対する法律構成について見解が別れているのである。とはいえ,学説によっても,上述した一体性に対する法的根拠の捉え方は大いに分かれている。例えば民法818条1項2文ないし2項の何れかに示された目的結合,民法139条に言う一体的行為,民法242条の行為基礎,民法273条に言う一つの同一的法律関係,などと捉えて抗弁の接続を正当化しようとする学説もあれば,組合関係を受領者-信用機関の間に認め,民法415条に基づく責任に着目して抗弁の接続を認めようと解する学説もある。しかし,これらの見解は何れも厳しい批判に晒されている状況にある。一方,判例は民法242条を通して解決論を展開してきた。もっとも,受領者の保護を図る点では学説・判例の間に争いはない。そして,この保護を判例は信用機関の開示義務に求めているが,この開示義務の存在と抗弁の接続を認める法的効果とは無関係である。と解すべきである.けだし,受領者は,消費貸借契約と融資契約との分裂から生ずるリスクについて,十分な認識がないからである。このような知見については.C. Bockmannによって明らかにされた。受領者の利害状況に関する分析が参照されるべきである。
|