1株式本質論の分析により、伝統的会社法理論が株式の概念についてきわめて厳密な理論を展開していながら、株主については曖昧なままに理解していること、換言すれば、株主と株式が直接的に対応する概念として把握し、株主を株式の集合体として把握していることを明らかにした。 2株主と株式は資本多数決制度を介在させて対応し合う概念であり、株主と資本多数決制度と株式の間にはトライアングルの関係があることを分析した。このトライアングルの関係により、株式会社の所有の動態的構造を認識できることを論証した。 3株式会社の所有の動態的構造を明らかにしたことにより、所有と経営がどのような論理的関係にあるかを明確に説明することができるようになった。その結果、株式会社制度は所有の論理だけで把握するのでは不十分で、会社財産管理の論理もまた重要な意義を有していることを明らかにした。 4伝統的会社法理論は、所有の論理の上に会社の機関構成を行っているが、本研究によれば、株主所有の論理と会社財産管理の論理という二重の論理の上に機関構成を行うべきである。それにより、実効性のある経営モニタリングシステムを構築できることになる。 5新たな経営モニタリングシステムを基軸とすることにより、現実に柔軟に対応できる新たな会社法モデルを創ることが可能であることを論証した。
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