研究概要 |
平成7年度には,アメリカ法における大株主の忠実義務のいわば序論の部分と、同法理の展開された情報開示の類型,および、同法理の展開された資産譲渡の類型に着手した。この類型の判決は,主としてデラウエア州,ニュージャージ州、ニューヨーク州,イリノイ州の裁判所の判決を中心として膨大な判決群を形成している。わたくしは,100年以上に渡って各州に散在する判決を1件ずつ丁寧に評価し,それぞれについて全体の中での位置づけを検討し,データベースに収め,壮大な大株主の忠実義務の法理の根幹部分の確立をめざして研究を行った。この成果として,Southern Pacific Co. v. Bogert, 250 U. S. 483(1919)事件や、Kabanaugh v. Kabanaugh Knitting Co., 123 N. E. 148(C. A. N. Y. 1919)事件やAllied Chemical & Dye Corp. v.Steel & Tube Co., 120 A+1. 486(Del. Ch. 1923)事件などが、根幹を形成することまでは判明したが,最先端の源流と言うべき判決はまだ発見することができない。また,資産譲渡の類型は,解散や新株発行,さらには資本の再構成といった諸現象が複雑に絡むため,なかなか基本的な筋を見いだせずに困難に直面している。なお,情法開示の類型については、比較的判例数も少ないためおおよその全体像を把握することが可能という見通しを得るに至っている。
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