老人福祉施設従事者の就労実態を中心に、より広く社会福祉労働者の就労実態をふまえた法的課題を明確にした。 社会福祉労働は、施設福祉労働と在宅福祉労働に分けられるが、いずれにおいても、(1)経営主体が地方自治体など公的団体であるか、委託された社会福祉法人等民間団体であるか、(2)その従事者の就労形態が、正規職員であるか、非正規職員(嘱託、パートタイマー等)であるか、あるいはボランティア等によって構成され、極めて多様である。 こうした社会福祉労働の多様性は、特に社会福祉労働が、家族労働や隣人間の互助として生成し、社会化してゆく過程にあることに起因しているが、それが法理構成を複雑にしている。 本研究の中で提示した法的検討課題は次の点である。 (1)ボランティアについては、無償であれ、同意して受け入れを認めている限り、契約関係を認めるべきである。指揮命令関係の存在を前提に、労災補償の保護の対象とすべきであろう。 (2)相互互助的な介護労働については、特に「時間貯蓄型」の場合には、「対価性」の検討が必要である。 (3)介護労働力の質的向上のために、公費負担による研修体制と研修権の構成が必要である。 (4)介護サービスの中で生じた利用者に対する事故の補償については、一般の不法行為法理(使用者責任)とともに、それを越えた地方自治体等の責任を、生存権法理を媒介に構成すべきであろう。 以上の諸論点について、さらに解釈論的課題として、また立法論的課題として、精緻化していくことが今後の課題である。
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