本研究は、労働組合組織率の低下が労働法の諸分野にいかなる影響を及ぼすかを検討するものであるが、本年度は、当初の計画に従い、主に労働者保護法の機能変化に焦点を絞り、実態面からの調査を行うとともに、理論的検討も行った。 労働時間の短縮状況が示すように、近時の労働時間法改正は着実に実務に影響を与えている。しかし、それが集団的労使関係に代替する機能を果しているかというと、簡単には答えられない。一方で、従来から集団的労使関係が展開しているところでは、かかる法改正が労使交渉に影響を与えることはあっても、それに代替しているとまで言えないし、他方、従来から集団的労使関係が展開していない所では、そもそもこのような立論が無理である。しかし、全般的にみれば、法律の規定する基準が実際の労働条件を規定する場が増えているとは言えそうである。そこで、京都における実態を把握するため、いくつかの中小企業にインタビューを行った。 担当者は、いずれも、本研究の問題意識を正確には理論しなかったが、おおむね近時の労働時間改正につき不満を表明した。それは、法律により当該企業の時間規制及び割増賃金のあり方を変えざるを得なかったことを示しており、法改正のインパクトの大きさが感じられた。もっとも、明らかに違法な状態にある企業もあり、実際の労働条件がどの程度変化していいるのか、簡単には言えない。アンケート調査等を通じて労働者保護法の機能変化をさらに明らかにする必要があるが、労働者保護法が労働条件形成にとってもつ意味につき大方の傾向は確認できた。
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