平成7年度は、つぎの3点を中心に研究計画を進めた。 (1)まず、「介護型派遣労働者」の概念について、老人福祉法、老人保健法、職業安定法などの緒法に分立した関連する法制度を整理し、労働法と社会保障の両方の面から分析を行ってきた。とくに、病院の付添婦の廃止が進められ、その反面、新たな立法の動向として、介護労働を労働者派遣法の対象業務に追加する立法提言が、主として労働政策の観点から提出され、また、ゴールドプランの実施のなかで拡大しているホームヘルパーの雇用のあり方について、法案の動き、各自治体の条例、要綱を分析してきた。とくに、家事労働、派遣労働者、家政婦との異同の整理、労働者派遣法や介護保険をめぐる法改正との係わりでの問題意識が必要となっている。 (2)実態調査としては、本格的大量調査を8年度の課題としているので、本年度は、その準備のために、金沢の地域福祉における介護従事者についての集中的な実態調査など、家政婦紹介所関係者、職業安定業務従事者、ホームヘルプ労働者などから「聞き取り調査」を行った。 以上の結果、(1)ホームヘルパーの地位は、(a)常勤の公務員、(b)非常勤の公務員、(c)社会福祉協議会等民間団体による常勤職員、(d)同登録・非常勤職員、(e)有料職業紹介による家政婦に、複雑に分化していることが明らかになった。 (3)歴史研究・比較研究として、ドイツ、北欧、イタリアの介護労働をめぐる法制度や実情について研究を行い、また、職業安定法の家政婦の有料職業紹介をめぐる制度の展開を分析した。比較研究では、日本では介護労働そのものが、家事労働を担当する点で低い評価を受けているのに対して、北欧やドイツでは、一定の専門的労働として高い評価や待遇を受けていることが明らかになってきた。
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