刑事司法の国際化の進展に伴う国際人権条約の国内法への影響を研究するため、ヨーロッパ人権裁判所の裁判例を収集し、これを分析するとともに、収集した資料をコンピュータに入力してデータベース化する作業を進行させた。ヨーロッパ人権委員会の決定についても、刑事司法に関するもののかなりの部分については、すでに原文を収集し、同様の作業を進めている。また、国連人権規約委員会に関する先例の収集も平行して行ったが、同資料については前記3つの資料ほどは作業が進行していないので、次年度の課題となる。関係者のインタビュー等による情報収集については、国連人権規約委員会の日本意員との面談、平成7年6月にヨーロッパでの会議に出席した際に行ったヨーロッパ評議会関係者との意見交換、8月の国連会議に出席した際の各国代表との意見交換等を通して実施し、貴重な情報を得ることができた。また、本年度に特筆すべき点としては、国連を中心にして国際刑事裁判所設立の動きが急速に高まったことである。そのため、国際刑事裁判所のあるべき姿とその実現可能性、及び、国際刑事裁判所が設立された場合に、わが国の国内法与える影響等を研究した。現在のところ、この問題は、主として1994年に国連国際法委員会が起草した国際刑事裁判所規定草案を対象として議論がなされているが、今後、国連人権規約委員会やヨーロッパ人権裁判所が示してきた刑事手続に関する人権保障の原則をどこまで国際刑事裁判所の規定に盛り込むことができるかが、きわめて重要な論点になると考えられるため、その観点からの問題分析を行った。
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