本研究は単年度終了を前提とし、(1)責任非難に代わる新たなる責任論としての積極的予防論の網領的展開と、(2)犯罪論体系内への組入れ(犯罪論体系の再構築)という2つの目的を、1)近時の量刑論の批判的考察を通じた、責任論としての積極的特別予防論において犯罪構成要素として考慮されるべき諸事由の抽出・体系化、2)アンケートによる実務における責任と量刑並びに責任と予防の関係の理解、実務上特別予防的観点から扱われている事由の抽出・体系化、及び、3)上述の2段階の統合による理論化、という方法により達成しようとしたものである。1)については、近時の多くの業績を渉猟した後、中止未遂を特に取り上げて、体系化の為の基本的判断枠組みを考察し、後掲の論文「積極的特別予防と責任非難」に纏めた。責任非難と積極的一般予防に関する従前の研究と併せ、目的の(1)はほぼ目途がついたといい得る。2)については、アンケートのサンプル数が十分には集まらなかったものの、実務家の判断実体を知ることのできる有益な情報が収集できたと思われる。実務では犯罪の成立を根拠付ける責任非難という観念と量刑を基礎付ける事情の集合体である量刑責任という観念との併存に対して殆ど疑問がない、というようなことはその好例であろう。情報の解析には、サンプル数の問題であって、予想外の時間を要し、未だ完全には終了していないが、中間報告として後掲「量刑と責任・予防に関するアンケート」報告に纏めた。3)における統合は、申請時から、若干の時間的な超過が予測されたが、一刻も早く終了し、犯罪論体系内への組入れ(犯罪論体系の再構成)を完成して、実務・学界に提示し、批判を仰ぎたいと考えている。
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