本年度も、前年度に引き続き、ドイツの経済規制立法の具体的な展開過程を明らかにする作業を継続し、同時に、新たにフランスおよびアメリカ合衆国における経済犯罪に関する立法、判例および学説の分析に著手した。 フランスについては、従来、必ずしも本課題研究のような問題関心からの研究蓄積が十分ではなく、最近の経済刑法に関する教科書・体系書などをフォローしつつ、鋭意、個別の判例・学説にアプローチしている段階であり、未だ、その全体像を明らかにするに至っていない。フランスの特徴として差し当たり指摘できるのは、(1)最近、フランスをはじめとするEU諸国を中心とした欧米諸国において、組織犯罪に対して国際的な情報交換ないし共同研究が展開されてきており、フランスの「経済犯罪」対策もその中で理解される必要があること、(2)フランス新刑法の中での法人処罰規定や経済犯罪規定が実務的にも定着しつつあること、そして、その運用実態をつまびらかにする必要があることなどである。 アメリカ合衆国については、州ごとの立法規制の違いをどのように類型化ないし分類するか、方法論的にも資料的にもなかなか煮詰まらず、もっぱら連邦法レベルでの規制(RICO法や反トラスト法など)を中心に資料を収集するにとどまっており、次年度に積み残しの課題となった。
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