本研究は、国会議員や政界の首脳がいろいろな場面において用いる言葉遣いを中心に行った。ここでは、政治的な言論の特徴、視点や内容、日本の政治文化との関連、そして日本で用いられる政治言語に影響を及ぼす社会、文化、心理的な要因などを検証した。 特に、本研究では、政治言語について、いろいろなレベルから分析を行った。まず申請者が90人の代議士を相手に行ったインタビューをもとに、代議士のタイプ別に言葉遣いの癖を特定した。たとえば、ある特定の心理的な特徴を持つ代議士は他とは違う言葉遣いをするだろうか。具体的に調べたかったのは、自尊心の低い代議士はそれが高い代議士とは言葉遣いが違うかどうか、あるいは権威主義的な代議士は、そうでない代議士と違う言葉遣いをするかどうかといったことである。以上の研究では、特に有為な成果は出なかったが、さらに同種の研究の必要性が見えたといえる。 もう一つ、歴代首相の所信表面演説についても、鈴木善幸から村山富市までの各首相の演説について内容分析を行って検証した。その結果、この演説については共通のパターンがあることがわかった。それは大衆にアピールし、同様にある特定のイメージを作り出すためほとんど同じ言葉が使われるということである。また本研究では、いろいろなところで政府首脳がアジア諸国や少数民族、在日外国人などに対して行った失言・暴言の数々や、選挙運動中のスローガン、マスコミ操作のための言葉遣いなども対象とした。 本研究で集めたデータは、日本の政治言語研究の中で、ほんの始まりに過ぎないが、その基本となるものといえる。さらに研究を重ね、既存の欧米の研究との比較も行えば、日本の政治言語に関する一般理論の構築が可能になるだろう。
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