本研究は、西洋思想との本格的接触以後、それらに学びつつなお儒学に拠って立って新たな思想の構築と展開を図ってきた中国系の一群の思想家たちの思想、すなわちいわゆる現代新儒学(当代新儒学ともいう)を対象とし、その政治思想としての特質と意義を、他の諸思想との比較の中で解明することを目的とするものである。とりわけ、彼等が対決した西洋思想と彼等が特に依拠した儒学の学派の思想との双方を解明することによってその特質を明らかにし、さらにそれを日本や朝鮮における西洋との本格的接触以後の儒学的な思想と比較して、その意義を浮かび上がらせていくのがそのねらいである。 そこで、本年度には、まず、研究補助者の協力を得て、関連する図書資料にいかなるものがあるかの調査を行った。ついで、それを所属機関の図書カードと照合して重複を調べ、その上で、資料を発注した。現在までに発注した図書資料は、139点(多くの巻からなる全集なども1点と数える )にのぼっている。但し、その多くは、中国本土・台湾・香港の出版であるためもあって、到着がかなり遅れている。また、到着済みの内、実際に整理が終了し、利用可能になっているものは、未だ必ずしも多くない。したがって、研究の結果として総括的なことを述べうる状況には至っていない。 しかし、資料調査の過程で、既に、(1)現代新儒学関係の資料の出版が、1990年代に入って急増していること、(2)それは、中国本土とそれ以外を問わないこと、(3)そして、それは、「中華人民共和国」の内外を通じて、現代中国思想の共通のある方向を示しているであろうこと、(4)それ故、本研究の問題意識は、単に懐古的でない、鋭い現代的意識を有するであろうことが、確かめられている。資料が本格的に利用可能となる来年度における研究の進展に意欲をかきたてられている所以である。
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