第2年度である平成8年度は、備品として購入したパソコンにより作成したデータベース「旧ソ連在住日本人粛清犠牲者一覧」を、この研究での協力者である富山大学藤井一行教授の好意により研究代表者加藤のインターネット上のホームページに公開した(WWW.fujii.edu/katoh.html)。北海道大学スラブ研究センターを通じて、世界中の旧ソ連研究・粛清研究のサイトとつながったが、まだ日本語データのみであるため、直接の成果はない、ただし電子メール及びファクスを通じて、モスクワのロシア現代史史料保存研究センター(旧マルクス・レ-ニン主義研究所、アンダーソン所長)、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、メキシコ、オーストラリア、香港、インド等との研究ネットワークを構築できた。またデータベース化された日本人粛清犠牲者約80人分は、加藤も編集委員に加わった『近代日本社会運動史人物大事典』全5巻(日外アソシエ-ツ)中に収録された。 平成8年度の最大の成果は、元片山潜秘書であった勝野金政の粛清について、遺族及び藤井教授らの協力を得て、ロシア内務省(旧KGB)・検察庁・現代史史料保存研究センターから大量の秘密文書を入手し、公式の名誉回復を実現したことである。このことは『朝日新聞』1996年9月20日及び97年1月13日に大きく報道されたが、その副産物として、秘密ファイルから片山潜の娘片山千代の野坂参三宛手紙がみつかり、片山千代も粛清された可能性がでてきた(『北海道新聞』で報道)。また、勝野金政逮捕と同時に国外追放となった根本辰の経歴・スパイ容疑が明らかになった。さらに、勝野ファイルを発掘したモスクワの協力者スド-・ミハル教授(日本人粛清犠牲者須藤政尾の遺児)のルートを通じて、加藤の協力者である東海大学白井久也教授らがモスクワに渡り、20年代粛清犠牲者である大庭柯公及び新保清の新資料を発掘した(『朝日新聞』で報道)。なお、20年代初めにアメリカ・メキシコで片山潜らと活動した小林通政も粛清された可能性があり、片山千代の件と共に、現在モスクワの現代史史料保存研究センター等にも問い合わせ、調査中である。
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