本年度の研究対象は文人政治家ティエールである。 歴史家としてのティエールについては、彼のフランス革命に関する著書、執政政府と第一帝政に関する著書を入手することができず、東京大学と一橋大学でその一部を閲覧・複写した。19世紀フランス政治史研究図書や同時代人の回想録などを通じて、ティエールの復古王政下の自由主義派、七月王政下の首相、共和主義的ブルジョアジーの中央左派としての反政府活動、二月革命実現に尽力し秩序党を代表し反ボナパルト派の指導、パリ・コミューンの無産派政府の弾圧、第三共和政初代大統領としての活動、歴史家・政治家として貫徹した共和主義的ブルジョア思想の特徴を解明することができた。しかし、平成4・5年度の一般研究(C)「フランスにおける学校の制度化と国民統合-教会と国家のイデオロギー」の研究成果を著書『教育闘争と知のヘゲモニ--フランス革命後の学校・教会・国家』(御茶の水書房、平成10年3月)としてまとめる作業と同時平行のため、従来必ず論文として発表してきた方針を貫けなかった。研究成果の論文発表は今後2年計画で実行する予定である。
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