本研究の目的は、「産業政策を構想する意欲と情報を有するが、それを実施する能力の不十分な」通産省と「産業政策を実施する能力はあるが、それを構想する意欲と情報を持たない」大蔵省・日本銀行との関係を明らかにし、それが産業政策の内容にどのような影響を及ぼしたかを解明することにある。 分析の焦点は3つの産業資金ルートである。すなわち、第一は補助金および租税特別措置等の財政的手段、第二は政府系金融機関を通じた政策融資、第三は民間金融機関を通じた融資である。 8年度は財政的手段に焦点を絞った。政治家の関心が「再分配」に傾斜としていたとするらば、政府資金はどのようにして産業界に供給されたのか、ともすれば野心的な計画に固執する通産省はどのようにして保守的な大蔵省を説得したのかなどが理論的な関心であった。 作業は、第一に関係者のインタビュー記事などの収集と分析、第二に申請者自身による面接調査を行った。租税については、大蔵省は通産省に対して特別措置の総枠を与え、その配分は通産省の判断に委ねていることなどが明らかになった。「再分配」については一般会計予算によって直接的に、「成長」については財政投融資計画による基盤整備など間接的になされなど、一定の分業がなされていることもおおむね明らかになった。
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