本研究の目的は、「産業政策を構想する意欲と情報を有するが、それを実施する能力の不十分な」通産省と「産業政策を実施する能力はあるが、それを構想する意欲と情報を持たない」大蔵省・日本銀行との関係を明らかにし、それが産業政策の内容にどのような影響を及ぼしたかを解明することにあった。 9年度も前年度に続いて、財政的手段の研究を行った。政治家の関心が「再分配」に傾斜としていたとするらば、政府資金はどのようにして産業界に供給されたのか、ともすれば野心的な計画に固執する通産省はどのようにして保守的な大蔵省を説得したのかなどが理論的な関心であった。政府による経済介入におけるもっとも重要であると同時に現実困難な課題は、衰退期に入った産業から摩擦なく撤退するかということにある。この点について、政府系金融機関が成長志向的なものと再配分試行的なもに分離されているという制度的な配置が、相反する政策目的の混合を防ぐ効果をもっていることなどが明らかになった。 「再分配」については一般会計予算によって直接的に、「成長」については財政投融資計画による基盤整備など間接的になされなど、一定の分業がなされていることもおおむね明らかになった。 財政的手段研究を進める途上で、従来の主要経費別分類に基づく分析に加えて、使途別分類に基づく分析にも着手した。これを通じて経済官庁が継続的に、いわゆる政策官庁化していることが、数量的にしめることができた。成果については近々公表する予定である。
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