本研究の目的は、「産業政策を構想する意欲と情報を有するが、それを実施する能力の不十分な」通産省と「産業政策を実施する能力はあるが、それを構想する意欲と情報を持たない」大蔵省・日本銀行との関係を明らかにし、それが産業政策の内容にどのような影響を及ぼしたかを解明することにあった。 分析の焦点は3つの産業資金ルートである。すなわち、第一は補助金および租税特別措置等の財政的手段、第二は政府系金融機関を通じた政策融資、第三は民間金融機関を通じた融資である。 作業としては、第一に、一般合計予算および財政投融資に関するデータの収集と入力などの基礎的な作業、、第一に関係者のインタビュー記事などの収集と分析、第二に申請者自身による面接調査を行った。租税については、大蔵省は通産省に対して特別措置の総枠を与え、その配分は通産省の判断に委ねていることなどが明らかになった。 添付した報告書の第1章は、政府系金融機関を通じた政策融資について、日本開発銀行による融資活動を、その前身である復興金融金庫との対比において明らかにした。第2章は、財政制度と金融制度の関係について検討している。第3章は、予算編成課程についての考察を行っている。全体として、成長志向的な産業政策は経済的観点からの判断により、再配分試行的な産業政策は政治的な判断によるという仕切が制度的に行われていたといえる。
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