研究概要 |
これまでの都市管理に関する政治経済モデルの主な欠陥は,(1)低所得階層の都市における経済的役割が考慮されていないこと,(2)都市の空間的側面が捨象されていることである。そこで本研究では,この2つを克服するモデルを構築し,分析を行なった.すなわち,2つの所得階層の住民から成る都市を想定し,その都市内の土地の所有者たるディベロッパーが地代収入を最大にするように2つのクラスの住民数を決定する。この場合,高所得階層の住民は低所得階層の住民から"負の隣接外部性"を受け,低所得者数が多くなるに伴い高所得者の土地への付け値が低下する。一方,生産部門の所有者にる高所得者の所得は,低所得者が供給する安価な労働量が多い程増加し,それは付け値を上昇させる。したがってディベロッパーの観点から,2つの階層の住民の最適な比率が存在することになる。ディベロッパーによって代理される都市管理者の政策が都市環境の変化に対してどのように変化するかを,効用関数,生産関数を特定化し,比較静学分析によって明らかにした.最も興味深い分析は低所得者による"負の隣接効果"が増加した場合である.分析によると,初期の低所得人口比率が高いときは,負の外部効果が増加すると,かえって低所得人口比を増加させ,ますます外部効果を大きくしてしまう。その結果,高所得人口が減少し,ついには都市が衰退してしまうが,それを防ぐためには,中央あるいは地方政府が良質の住宅を供給し,交通システムを改善し,教育や公衆衛生を推進することによって負の隣接効果を小さくするようにしなければならない。
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