1.成果 (1)日本、沖縄県、英国、米国、ロシアのSAM作成を通じ、国民経済計算(SNA)統計の利用方法、データ不足への対処方法、分析目的に応じたSAMのデザイン方法について知識を蓄積した。 (2)不整合なデータから作成したSAMの各勘定の収支を一致させるために必要となるマトリックス・バランシング手法についてサーベイし、各手法をテストした。結果として、各勘定の収支均等を制約条件として原データからの乖離率の2乗和を最小化する最適化問題を解くという手法がSAM作成に適していることがわかった。 (3)SAMの乗数手法を実際に応用し、従来の産業連関表による乗数分析との違いをあきらかにした。とくに構造パス分析については、分析用ソフトウェアを新規に作成、実用化した。 2.今後の課題 (1)ロシア経済SAMの作成、分析は、統計データの問題により最終的な成果は得られなかった。しかし、ロシア経済統計について理解を深めることができ、今後のロシア経済SAM作成の手掛かりを得た。 (2)SAMの発展形態である計算可能一般均衡(CGE)モデルの作成を開始することを予定していたが、SAMの作成、分析(特に分析用ソフトの作成)に予想以上の時間がかかり、この方向へ前進することができなかった。しかし、本研究により、CGEモデルに必要なデータ面についての基礎は固まった。今後、ロシアSAMとロシアCGEモデルの作成に本格的に取りかかる。
|