景気循環のカオス理論的研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07630010
• 研究種目: 一般研究(C)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 西村 和雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (60145654)
• キーワード: カオス / 内生的成長 / 景気循環

研究概要

従来のマクロ経済モデルは、集計化された変数の間の関係をとらえて、経済政策の効果を分析する。一方、産業連関分析も盛んに使われていたが、線形分析に限られていた。平成7年度の本研究では、これを、集計化される以前の変数を用いて、すなわち産業連関分析と同様に産業構造の違いをモデルの中に組み込み、かつ産業連関分析と異なり非線形モデルを用いて、マクロ経済モデルを構築した。その上で、動学モデル化し、経済成長と景気循環の関係を明らかにし、資本ストック、雇用量、消費の変動を説明するモデルを分析することを試みる。
非線形のマクロ動学モデルの分析には、カオスや複雑系で代表される非線形動学とよばれ、1970年以降に発展してきた数学が用いられている。
研究を始めるにあたって、平成7年度の5月に、オーストラリアのウィーン工科大学で行われた経済動学の国際会議で、これまでの経過を発表した。
また、7月には小樽商科大学で内生的理論の研究会を主催し、1月には箱根において開かれた国際貿易に関する国際コンファランスに出席し、意見交換をしてきた。データの収集はほぼ終わり、理論モデルの精致化と分析結果を出すための準備はできた。
平成8年度には、新しい研究結果を出し、論文としてまとめる計画である。平成8年4月には、香港中華大学の経済学部とソウル国立大学の経済学部で研究の途中結果を発表する。6月にはコ-ネル大学でMajumdar、 Mitra両教授と共同研究を行う。それらを通じて、国際的な学術雑誌に投稿する論文をまとめてゆく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kazuo Nishimura Gethard Sorger: "“Optimal Cycles and Chaos: A Survey"" Studies in Nonlinear Dynamics and Eonometrics. (予定).
• [文献書誌] Kazuo Nishimura, Makoto Yano: "“On the Least Upper Bound of Discunt Factors that are Compatible with Optimal Period-Three Cycles"" Journal of Economic Theory. (予定).
• [文献書誌] Kazuo Nishimura, Michihiro Ohyama: "“External Debt Cycles"" Journal of Structual Change and Ecomonic Dynamics. 6. 215-236 (1995)
• [文献書誌] Kazuo Nishimura, Makoto Yano: "“Non-linear Dynamics and Chaos in Optimal Growth: An Example"" Econometrica. 63. 981-1001 (1995)
• [文献書誌] Kazuo Nishimura, Makoto Yano: "“Non-linearity and Business Cycles in a Two Sector Equilibum Model: An Example with Cobb-Douglas Production Functions"" Nonlinear and Convex Analysis in Economic Theory. 231-245 (1995)
• [文献書誌] Kazuo Nishimura, Makoto Yano: "“Durable Capital and Chaos in Competitive Business Cycles"" Journal of Economic Behavior and Organizations.27. 165-181 (1995)
• [文献書誌] 西村和雄: "ミクロ経済学入門(第2版)" 岩波書店, 458 (1995)
• [文献書誌] 西村和雄: "知の方程式" 集英社, 253 (1995)