平成8年度は、4月以降、内外の研究者と、研究経過について意見交換を行い、景気循環のデータ分析、それを説明する経済モデルの精緻化を行い、10月までに、新しいマクロ動学モデルを完成した。数学的には、非線形動学のカオス、フラクタルの応用、また、戦略的行動も考慮することでゲーム理論の応用も可能にした。具体的には、2部門のモデルに資本財産業の収穫逓増を仮定し、産業全体の生産量の規模が外部効果として働き、個々の企業の生産効率を高めることを明示化し、経済成長、景気循環、カオスが生ずる条件を求め、シュミレーションで成長経路を解析することに成功した。真に、収穫逓増を仮定しないモデルも考え、その場合も外部効果のみによって、均衡の不決定性が生じることを証明した。また、それを複数の経済主体の相互依存関係と戦略を明示化したモデルに拡張し、微分ゲームの均衡戦略の安定性も検討した。それらの結果は、現在国際的な学術誌に投稿すべく論文にまとめてある。
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