本年度の研究計画は微分ゲームの経済学への適用のために必要な数学、特に本研究にとって最も関連の深い最適制御理論や偏微分方程式論の学習を進めていくことであり、そのために関連分野の専門家から専門的知識の供給を受けることであった。 本研究にとって最も重要な目標は状態変数が複数個存在するような微分ゲームにおいてそのFeedback-Nash均衡解がどのような性質を持っているか、特に、パラメーターに対してFeedback-Nash均衡解がどのように依存しているかを明らかにすることである。残念ながら国内の研究者の中でこの問題に関してヒントを与えてくれる人に会えなかったが、CanadaのMcGill大学経済学部のL. N. Long教授との間でこの問題に関して共同研究を開始することができた。具体的には、 (i)もし目的汎関数及び状態変数の運動を規定する微分方程式を定義する(状態変数と戦略変数の)関数が広くhomotheticityと呼ばれるある特定の性質を満たすとき、Feedback-Nash均衡解について相当明快なcaharacterizationが可能であること。 (ii)この「ある特定の性質」が経済理論において通常仮定されることから著しく離れたことではないこと。 が、現時点までの同教授との共同研究のなかで明らかになってきた。この方向は非常に有望と考えられるので、本研究も今後同教授との共同研究を主軸にして進めていきたい。
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