研究概要 |
本研究の基本的な目的は、状態変数が複数個存在するような微分ゲームにおけるフィードバックナッシュ解の数学的性質について検討し、フィードバックナッシュ解を経済分析における基礎的な均衡概念の一つとして使用できる道を明らかにすることである。 残念ながら、現在の段階までに当初の目的を達成することはできていないが、Ngo Van Long教授(カナダ、マギル大学経済学部及びCIRANO)との共同研究によって従来にない新しい研究成果が達成できた。 すなわち、今、状態変数の運動方程式dx_i/dt=f^i(x_l,...,x_n,c_l,...,c_s)、i=1,...n,が状態変数及び各プレーヤーの制御変数に関してhomogeneous of degree oneであり、かつ、目的汎関数が一定の条件を満たす被積分関数によって定義されているとき、たとえ状態変数の数nであっても、フィードバックナッシュ解がn個の状態変数の同次関数になる、という定理の証明に成功した。(N.V.Long and K.Shimomura "Some results on the Markov equilibria of a class of homogeneous differential games",CIRANO Scientific Series #35.) 筆者及び共同研究者のLong教授は、この定理が経済理論、特に貿易論及び近時の内生的経済成長論に対して相当程度適用可能性があると信じている。来年度はこの定理のこれらの分野への適用に重点を移していく予定である。
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