本年度は鉄鋼業と自動車工業に焦点を合わせ、1975年以降の産業調整の態様を解明するために、日米EUの3先進地域と韓国の関連データを整理した。鉄鋼業では国内市場の成熟とVER(輸出自主規制、相手国の輸入抑制)のために先進国共通で雇用が減少しているが、プラザ合意以降の為替調整で、日本は相対的な競争力が態かしたために、輸出減、輸入増となって調整圧力が高まっている。アメリカの方は逆で、輸出増、輸入減となり、調整圧力が減じている。しかし、素材産業として、需要先である自動車の海外進出が増えたために、それをサポートするための海外投資が増えている。自動車工業では、この期間全体として雇用は逓増傾向にあるが、国内市場の成熟と成長するアジア市場での日米欧間の競争激化により、国内での雇用面の調整圧力が増える傾向にある。 日本の両産業でのプロセス・コンピュータやロボット導入による生産性上昇は国際的にみて著しいが、86年以降の大幅な円高は、ドル・ベースでみたコストの大幅な上昇となっており、マクロ的な調整と産業レベルの調整の関連が益々重要になっているが明らかになった。 その点を考慮して、モデル作業では、マクロ面と産業・貿易面の連関を分析するための年ベースのパイロット・モデルを推定した。カバーする国・地域はNAFTA、EU、ASEAN、NIEsと日本の13である。このモデルに直接投資の地域配分を説明するモデルと両産業のモデルを連結することで、マクロと産業での調整の統合的な影響が評価できる。それが次年度の主要な研究課題である。
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