研究概要 |
平成7年度においては、改訂SNAの構成要素,すなわち (1)勘定系列,勘定項目の配置,勘定項目と取引主体それぞれの概念と定義 (2)経済取引の把握に必要な記録時点の特定と評価の方法 (3)時系列比較のための指数の計算方式 の3つの点に関する諸規定を現行SNAと比較する研究課題を設定して研究作業を進めてきたが,今年度の中心的研究成果は,(1)の勘定系列,勘定項目の配置に関するものである.従来,ミクロ会計:企業会計の基本原理である複式簿記と,マクロ会計:国民経済計算の記録原理は,類似はしているが必ずしも同一原理に従うものではなかった.しかし改訂SNAで採用されたフランス式記録システムである統合経済勘定では,取引の記録方針として「誰が,何を」が用いられているため,簿記学の損益計算書,貸借対照表に類似した勘定構成がとられている.「体系で使用される勘定規則と手続きは,企業会計で長く使用されてきたものに基づいている.伝統的な複式記入の簿記原理は,経済会計あるいは国民経済計算の基本公理である」と,改訂SNAで述べられているように,企業会計の簿記原理が国民経済計算体系の基本的考え方として採用されている.改訂SNAの基本勘定である経常勘定と蓄積勘定は,損益計算書と,期末と期首の貸借対照表の差額にそれぞれ対応するものである.したがって,改訂SNAの勘定系列は,損益計算書,貸借対照表の考えを基礎として説明することができる.つまり,改訂SNAの勘定原理は,企業会計の複式簿記原理に基づくものであるという点が今年度の重要な成果である.
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