研究概要 |
平成8年度においても前年度同様,改訂SNAの構成要素,すなわち (1)勘定系列,勘定項目の配置,勘定項目と取引主体それぞれの概念と定義 (2)経済取引の把握に必要な記録時点の特定と評価の方法 (3)時系列比較のための指数の計算方式 の3つの点に関する諸規定を現行SNAと比較する研究課題を設定して研究作業を進めてきたが,今年度の中心的研究成果は,(1)と(2)に関するものである.(1)に関しては,改訂SNAの勘定原理は,企業会計の複式簿記原理に基づくものであるという点が昨年度明らかにされたが,今年度はさらに,具体的に改訂SNAで採用されたフランス式記録システムである統合経済勘定は,複式簿記の記入原理に基づいて考案されたものであることを説明する. (2)の評価に関しては,生産物の取引を評価する場合,3つの方法:基本価格評価,生産者価格評価,購入者価格(市場価格)評価が考えられるが,改訂SNAでは,中間消費,最終消費,資本形成に関しては,市場価格評価,産出に関しては,基本的に基本価格評価が勧告されているが,それが入手できない場合には,生産者価格評価が提案されている.価格評価を考える場合,税の問題を考慮しなければならないが,改訂SNAでは,従来用いられていた間接税,直接税の呼称を廃止し,かなり複雑な生産および輸入に課される税等の用語を用いてこの問題の検討が行われている.この研究では,価格評価とこの複雑な生産および輸入に関する税の対応関係を整理し,明瞭にすることを試みた.
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