多国籍企業による関連企業間の国際振替価格である移転価格は、送金政策に使用されることに示されるようにその経営上の戦略的役割を担うとともに多国籍企業による租税回避の手段としても用いられることから、日本をはじめ多くの国の企業と政府(地方政府含む)はアメリカ税務当局との間で税の追徴問題に陥っている。そして追徴額の決定にあたっては、基準となる独立企業間価格の決定が重要な位置を占めるが、この際、価格に関するデータを用いた統計的手法の利用が探究されている。 米商務省の貿易データベースを用いた統計分析は政府や企業によるその移転価格の推定の改善を支援できるとし、そのための道具として、米国政府より報告されたあらゆる商品についての国際貿易取引データを並べ換え、また分析し得る国際価格マトリスクを開発したのである。この国際価格マトリスクから得られる統計情報は他の経済モデルによる分析と同様あらゆる取引についての正確な移転価格を決定することはできないが、統計的にみて異常な決定をすることより、IRS(Internal Revenue Service 内国歳入庁)査察官の行う異常な取引の防止に役立つとともに米国関税局(U.S.Custome Service)のもつデータへのアクセスが可能になれば、価格の明瞭性への説明やその証拠となる記録の提出要求も可能になるのである。
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