研究最終年度である平成9年度においては、本年度独自の研究と過去3年間の研究成果のまとめを行った。 研究初年度の研究目的並びに計画・方法は、(1)S.J.PackとJ.S.Zdanowiczの研究成果の入手・検討、(2)米国商務省センサス局U.S.Merchandise Trade Data Base(CD-IM)を利用した国際価格マトリクスInternational Price Matrixの作成、(3)統計的分析による移転価格算定のプロセスの検討を行い、また、研究2年度である平成8年度においては、前年度の海外研究の成果を踏まえ、移転価格の独自の算定基準の統計的研究を行った。初年度における移転価格算定のプロセスの整理を踏まえ、最新の価格に関するデータを用いた統計的手法の利用可能性を探究した。その際、時間的制約もあり、日米間で問題となっている、製薬産業、電話機などの家電製品等、いくつかの業種に絞って研究を行った。さらに、関税データの公表のあり方についても検討を行った。 米商務省の貿易データベースを用いた統計分析は政府や企業によるその移転価格の推定の改善を支援できるとし、そのための道具として、米国政府より報告されたあらゆる商品についての国際貿易取引データを並べ換え、また分析し得る国際価格マトリクスを開発したのである。この国際価格マトリクスから得られる統計情報は他の経済モデルによる分析と同様あらゆる取引についての正確な移転価格を決定することはできないが、統計的にみて異常な価格を決定することにより、IRS(Internal Revenue Service内国歳入庁)査察官の行う異常な取引の防止に役立つとともに米国関税局(U.S.Custome Service)のもつデータへのアクセスが可能になれば、価格の明瞭性への説明やその証拠となる記録の提出要求も可能になるのである。
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